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■お勧めの本、おすすめの小説、人生を変えた本(3)
自分の感受性くらい自分で磨け●茨木のり子詩集『おんなのことば』


ポケットに入る詩集なのに、その中身には人生が凝縮されている。

決して難しい言葉や表現を使ってないのに、何故か、新鮮な言葉。

決して世間に媚びず、前向きに人生を凝視している。

背筋を伸ばして凛としている言葉たち。


冒頭の「自分の感受性くらい」を読むと、頭をガーンと叩かれた感じになる。



『自分の感受性くらい』茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて


気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか


苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし


初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった


駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄


自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ





人間の醜さを認めながらも、人間を愛している詩人の茨木のり子。


無駄口ばかり叩いている僕だけど、この詩集を読む返すたびに自分が恥ずかしくなる。

本当のことを語るのに、そんなに多くの言葉はいらないんだよ、と教えてくれる。

どの詩を読んでも魂が洗われていく。



いい詩は「飛躍」がある。

いい詩は世界を「別の視点」で見せてくれる。


僕は惰性に流され生きているなと、気が付いたら、必ず、この詩集を開く。

この詩集『おんなのことば』は時には僕を叱ってくれ、時にはより多く、励ましてくれる。


全然、関係ないのだが、茨木のり子さんは僕と同じ薬学出身なので、それだけでも嬉しくなってしまう(もう、故人になられている)。



茨木のり子さんが詩の楽しみ方や感じ方を書いた『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書、1979年)は小中学生用に書かれたものだが、大人でも十分に考えさせてくれる本になっており、なるほど、詩はこういう味わい方をするのね、と教えくれる。

この『詩のこころを読む』と、今まで読んでいた詩も別の味わい方を感じさせてくれる。


砂漠の中のオアシスのような詩集『おんなのことば』は、「詩はちょっと・・・」と照れているあなたにもお勧めのできる詩集です。

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いろんな意味で重たいがお勧めの本●『決壊』(平野 啓一郎)


2002年10月全国で犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。

容疑者として疑われたのは、被害者の兄でエリート公務員の沢野崇だったが……。

〈悪魔〉とは誰か?

〈離脱者〉とは何か?

止まらぬ殺人の連鎖。明かされる真相。

そして東京を襲ったテロの嵐!“決して赦されない罪”を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。


凄い。
 
ドストエフスキー没して百年余。


この小説の凄さは、ドストエフスキー的な対話を軸に、ネットやメディアに溢れる言説を本物そっくりに活写し、かつ登場人物ひとりひとりの血を、体温を、リアルに濃密に伝えてくることだ。
 
残虐な連続殺人に対して、メディアの新情報を今か今かと待ち、残虐な事実を知るたびに、やり場のない怒りを紋切型の喋りでしか表現できないもどかしさに腹立つ、という状況は、まるで現実そのもので、犯人の少年や家族の言葉は雑誌やテレビというメディアを通して、実在の事件そのものだ。

そこに生身の少年がリアルに描かれることで、コメンテーターや教育者の正義の言説の空疎さが浮き彫りになってしまう。

 
殊に沢野一家の悲劇は、前半のリアルな一家団欒の描写を経て、痛ましく胸に迫り、はからずも平成のスタヴローギンとなってしまう沢野崇の造形は真に魅力的だ。
 

想像や未来の予知などと言うよりは、明らかに現状を写実したものに近い。

本作で語られることは極めて切実で我々の身に、いや心に迫ってくるが、「なぜ人を殺してはいけないか」という問いを初めとして、どれもこれも殆どがどこかで聞いた事ある事ばかりである。

小難しい言葉で飾られた思想のごときものも実質は同じであり、結局のところそれは今の時代の状況、現代人の抱える思いや言葉を代弁し語り、時代精神をそのまま描いただけなのである。

本作のそういう時代精神・時代状況の写実は専ら殺人事件や犯罪をめぐる諸問題や諸言説を対象としている。

責任能力や精神病の問題から警察の取調べの問題まで現代日本で騒がれる犯罪関係、法律関係のあらゆる問題が本作内には凝縮され扱われていると言えよう。

それは私としては高く評価できる極めて意義ある事に思えた。

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人生が熱くなるお勧めの本●『ボックス!』(百田 尚樹)


高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢、進学コースの秀才・木樽という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。

二人を見守る英語教師・耀子、立ちはだかるライバルたち......。

様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!?

『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が、移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説!

ボクシング小説の最高傑作がいま誕生した!


王様のブランチ「マッチョイ」で推薦されていたこの本。

導入がいい。厚めの本は、導入の数ページで挫折したくなるものが多いが、導入の2ページで既に吸い込まれる。

放送作家という、飽きっぽい観客を対象にしたTV映像の世界で生きてきた作者ならではなのか。

この本の読者の真の対象はいわゆる「青春まっさなか」世代ではないような気がする。

いくつもの挫折を繰り返し、才や努力の狭間の中で、負けることへの恐怖心が生存本能で染み付き、動けなくなった大人たちへの示唆が溢れているからだ。

中心となる高校生達を、多くの大人たちがそれぞれ過ごしてきた人生と価値観を元に囲み、 それぞれの思いで、彼らに対して行く。


「努力は才を超えるか?」「才とは何か?」「情熱の源泉は?」そうした、様々な問いに対しての様々な答えをストーリーの中で見せていくこの本。

リミットを超える瞬間を求め、情熱を取り戻す喜びを、是非体感して欲しい。



熱い話である、胸すく話である、それでいて胸が締めつけられる話でもある。

とにかく、グッとくる事請負の小説。

ボクシングに天賦の才能を見出された無軌道な鏑矢と、彼を見守り、彼のように強くなりたいと願う聡明な優紀、これは、全くタイプの違う2人の高校生の友情とボクシングのドラマ。

物語は、優紀と、高校のボクシング部顧問の耀子の視点で終始展開する。

ふたりと、共通の“大きな存在”鏑矢、誰に感情移入しても面白く読めるが、個人的には優紀の“物語”により共感を持って読んだ。


彼女の前での理不尽な暴力に無抵抗のまま屈した思い、ボクシングが上達し心弾む喜び、思慕する耀子の鏑矢への目線を悟った時によぎる微妙な感情、何よりボクシングを通して人間的に強く大きくなっていくという、これは10代の男性の青春成長小説である。



ボクシングは相手の運動能力を破壊する目的で人体の急所ばかりを狙って殴る格闘技。

本編中に語られる定義は、このスポーツの本質を明確に言い表している。

これはまた、本格的なボクシング小説。

ルール、トレーニング、テクニック、戦術、闘争本能、そして精神世界と、ここまで細部に渡って描写された小説を知らない。

鏑矢を始め、ボクシング部員たちも、優紀、友野ら優等生たちも、皆嫌味なく清々しく書き込まれていて、いまどきこんな純粋な若者たちばかりなのかとも思うが、やはり好感が持てる。

ずば抜けて才能がある者と、絶え間ない努力でその位置に上ろうとする者。

“努力”、“天才”、“才能”、“一流”の本質について見事に言い得ているのも魅力的だ。

息つく間もない580頁、筆者は「探偵ナイトスクープ」等で知られる放送作家だそうだが、このドラマツルギー、ダイナミックな筆力は、只事ではない。

若い人はもちろん、かって若者だった人や女性にも是非お薦めの1冊と言っておきたい。

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